『賃上げ促進税制』
令和6年に改正となり、より利用しやすく制度が強化されました。
そもそもこの税制については、何となく聞いたことがある!使えるなら使いたい!
でも対象になるのかよくわからない・・・という方も多いのではないでしょうか。
今回は、そもそも『賃上げ税制』がどのような税制なのか、対象になるケース、令和6年の改正点について
紹介したいと思います。
※今回は、中小企業(含む、個人事業主)向けの内容に絞ってご紹介します!
そもそも『賃上げ促進税制』ってどのようなもの?
『賃上げ』や『人材育成』などの投資を積極的に行う企業に対して、政府が始めた支援制度の1つです。
具体的には、前年度よりも従業員(含む、パート従業員)へのお給料の支給を増やした場合、その増加額の一部を
法人税(個人事業主の場合は、所得税)から税額控除する(税金を直接減らせる!)という制度になります。
中小企業の場合は決算で確定申告をする時に、個人事業主の場合は2~3月の確定申告の時に、
この税制を使うことで納税額を減らせる可能性があるというわけです。
どれだけ賃上げすれば、この税制って使えるの?どれだけ税金を減らせるの?
この税制を使うには『必須要件』があり、まずは以下の要件を満たしていることが必要となります。
【必須要件】
雇用者給与等支給額(★1)が前年度と比べて、1.5%以上増加していること
⇒ 控除対象雇用者給与等支給増加額の15%を法人税額(又は所得税額)から控除
★1 雇用者給与等支給額とは、役員報酬(役員家族への給与を含む)を除く、国内の雇用者に対して
支給する給与を指します
例えば、個人事業主の方で令和5年の従業員(含む、パート従業員)への給与総額が1000万円、
令和6年の給与総額が1020万円だとします。
この場合、雇用者給与等支給額の増加率は2.0%の増加(1020万円÷1000万円=1.02
前年比102%)になりますから、この必須要件を満たします。
増加額20万円(1020万円ー1000万円)の15%である3万円について、
法人税又は所得税から直接控除出来る可能性があるというわけです。
※注意事項※
ここで1つ気を付けたいのが、税額控除の限度額は、調整前の法人税(所得税)額の20%相当額になる
という点です。
調整前税額が仮に30万円だとすると、上記の3万円は調整前税額の10%なので、
全額、法人税(所得税)額から控除することが出来ます。
調整前税額が12万円だと、その20%相当額である2万4000円の控除になります。
令和6年の改正ってどんな内容?
中小企業では、令和6年4月以降に始まる事業年度分から、個人事業主では令和7年以降の事業年度分から、
令和6年に改正された税制が適用となります。改正点の大きなポイントは以下の2つです。
①上乗せ要件の緩和
教育訓練費(★2)の額が、前年度と比べて5%以上増加している場合、税額控除率を10%上乗せする
ことが出来ます。
⇒必須要件の税額控除率15%と合わせて、25%の税額控除となる
令和6年3月以前は10%だった増加率が5%になり、より上乗せ要件が達成しやすく改正されました。
★2 教育訓練費とは、従業員に対して、その職務を行わせる為に研修を受けさせる等をして発生した費用
のことをいいます。具体的にどのような費用が対象になるかは、以下の中小企業庁HPにあるガイドブックを
ご確認下さい。
②繰越控除措置の新設
上記の必須要件を満たす賃上げを実施した年度に、例えば赤字決算となり納税額が少なかったが為に控除
しきれなかった金額については、翌年度以降、5年間繰り越しが出来るようになりました。
※繰越控除措置を適用する場合は、未控除額が発生した事業年度以後の各事業年度の確定申告書に、
繰越税額控除限度超過額の明細書を添付することが必要となります。
【中小企業庁のHP 中小企業向け「賃上げ促進税制」】
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/syotokukakudai.html
令和6年の税制改正により、より多くの中小企業、個人事業主が使いやすい制度になったかと思います。
是非ご参考にして頂ければと思います!