飲食店を経営されている方のうち、営業場所が自宅の一部ではなくテナントを借りて毎月家賃を支払っている方も多いかと思われます。家賃の場合は前家賃が一般的ですので12月下旬に支払う家賃は翌年1月の家賃というケースが多いのですが、個人の確定申告の場合にこの家賃は支払った年の経費として認められるのかを考えたことはありませんか?
12月に支払う翌年1月分の家賃は本来翌年の経費ですので、正しい勘定科目は「前払費用」ということになります。なお、前払費用とは「一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち、当該事業年度終了時(個人事業の場合はその年12月31日)においてまだ提供を受けていない役務に対応するもの」とされています。ただし、この前払費用については下記要件を満たす場合は支払った日の属する事業年度の損金の額(個人事業の場合は支払った日の属する年分の経費)に算入することが認められています。
■要件1
その支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものであること。
■要件2
支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額(必要経費の額)に算入していること。
つまり、上記のように12月に支払った翌年1月分家賃だけではなく支払った日から1年以内の費用を年払いして短期前払費用として経費に算入することが可能となっており、これは重要性の低いものについては厳密な期間対応を求めることなく支払時点で経費算入を認めるという重要性の原則に基づいたものとなっています。
ただし、継続適用が求められているように単なる利益操作のために年払いをしたりしなかったりというのは認められるものではなく、また、1年を超える年払いについては支払った額の全てが経費として認められないなどいくつか注意しなければならない点もあります。
短期前払費用としてよく使われるものは家賃や保険料の年払いであり、通常の12ヶ月分+αの経費が認められるため即効性のある節税対策として有効です。ただ、その分の資金が一時に流出してしまいますし、翌年の利益なども考えた上で実行されるのが良いかと思われます。